コストコのビジネスモデルにみるretain(維持)の重要性
先日、東洋経済オンラインにこんな記事がアップされていた。
これについて、コンテンツマーケティング観点で、考えるのが苦手な自分が考えてみる。
会員費収入だけで安定した利益に直結するビジネスモデル
コストコの2021年上期決算発表内容が記載されており、ざっと拾うとこんな感じ。
- 上半期売上862億ドル(約9兆3,100億円)前年比+161%
- 第2四半期売上439億ドル(約4兆7,400億円)前年比+15%
- 個人会員 4,840円
- 個人会員エグゼクティブ 9,900円
- 法人会員 4,235円
- 法人会員エクゼクティブ 9,900円
2021年度の、第2四半期の収益構造はこちら。
【収益】【費用】
- 売上高:439億ドル
- 会員費収入:9億ドル
【メモ】
- 商品の仕入れ:391億ドル
- 販売費及び一般管理費:43億ドル
- 原価率約90%(391億ドル÷439億ドル)
- 営業利益相当額14億ドル
この構造から、商品自体は原価で販売しても構わず、なぜなら既存会員に楽しんでもらい、会員を継続してもらえれば会員費収入で安定した利益に直結していくモデルだから、とのこと。
また、コストコはECも拡大していた。このコロナ禍において、巣ごもり需要を狙いECを強化しているのではないか? ECを利用するためにはコストコの会員登録が必要だし、会員費収入も増えることを狙ったのではないか? とも考えられるが、そのような意味合いではなくあくまでも既存会員のサービスレベルを上げるためにECを強化している、というのが著者の見解だった。
これが正だとすると、コストコは本当に『既存会員をベースに設計されたビジネスモデル』なんだな、ということが分かる。
仕入先も消費者(会員)もwin-win-winな取り組み
さらに、興味深い取り組みもあったので紹介する。
- 昨年コロナ禍でコストコが漁業へアプローチ
- 飲食店が不調に陥るなか供給業者も大変。そこでコストコは漁業関係者から養殖のマダイを買い取り店舗で販売
- 苦境に陥っている分野を救済するために良い商品を直接仕入れ販売
- 消費者は高品質・低価格のものを享受できる
- 結果コストコのブランドイメージ向上にもつながる
- さらに新規会員増加、会員維持率向上にもつながるかもしれない(著者談)
業績不振に陥っている1次産業(今回の事例は漁業)から質の良い商品を直接仕入れることで、自社だけでなく仕入先も消費者(会員)もwin-win-winで、もうなにも言うことはない取り組みになっている。
また、コストコは日本国内で2021年に北海道、愛知県、熊本県と店舗を拡大予定なんだとか。2021年開店ということは、前年度(2020年度)の業績が悪ければできないことである。
retain(維持)の重要性
さて、この投稿は「コンテンツマーケティング観点からコストコのビジネスモデルを考える」がテーマのため、最後に触れてみたい。
まずはコンテンツマーケティングの定義について、この概念を広めたCMIのそれを見てみるとこの様になっている。
Content marketing is a strategic marketing approach focused on creating and distributing valuable, relevant, and consistent content to attract and retain a clearly defined audience — and, ultimately, to drive profitable customer action.
日本語にするとこうなる。
コンテンツマーケティングは、明確に定義されたオーディエンスを引き付けて維持し、最終的には収益性の高い顧客行動を促進するために、価値があり、関連性があり、一貫性のあるコンテンツを作成および配布することに焦点を当てた戦略的マーケティングアプローチです。
このコンテンツマーケティングの定義に、コストコのビジネスモデルを当てはめてみるとこんな感じになるだろうか。
- 「明確に定義されたオーディエンス」→店舗周辺に住む人たち・既に会員になった人たち
- 「引き付け」→会員の口コミ・メディア露出
- 「維持」→会員の満足度を上げる取り組み
- 「収益性の高い顧客行動」→会員登録+商品購入・会員継続+商品購入
- 「価値があり、関連性があり、一貫性のあるコンテンツ」→質の高い商品・体験
背景にコロナ禍による市場の変化やテクノロジーの進化もあると思うが、より多くの人にリーチしより多くの人に使ってもらうという思考ではなく、既存顧客(会員)をベースにしてビジネスを設計することの重要性が分かる、とても良い事例ではないか、と個人的に思った。
そしてこの事例からも分かるように、コンテンツマーケティングは単なるコンテンツ制作ではもなく、マーケティングでもなく、『ビジネスモデル』なんだということが改めて認識できるのではないか。
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